怪物はハコの中に

架空の劇団にまつわる創作に関するものです

2018-01-01から1年間の記事一覧

五分の魂

ぼくの身体はコルク板の上。ニヤニヤと笑う目がぼくを見下ろしている。「芋虫にさあ、目玉みたいな模様つけてるのいるでしょ。あれ、なんのつもりだと思う?」 ピンがぼくの腹を貫き、コルク板に突き刺さる。声は出なかった。声帯なんて生まれつき持っていな…

ルナティック・フォー・ユー

レッスン帰りに見た夕空は、いやに大きい月が丸く煌々と輝いていた。「お月様がきれいだね」 何時間も踊り、歌い続けていたはずの彼女はまるで疲れを感じていないようにスキップしながら空を見上げている。彼女にそう言われると、なんでもないはずの月が彼女…

悪魔が戻りて

劇団ブルートループの若きエース、斎波正己の暴力事件による波紋は、入団から日の浅い新人団員や若手俳優達にも広がっていた。「マジであの人、殴ったん?」「知らなぁい。でも紅蓮クン、怪我してたってぇ」「これからウチらどうなんのよ……暴力野郎と同じ劇…

枯木忠高の小規模な懊悩

斎波が『ああ』なってからしばらく、ブルートループ内はひどいもんだった。「正己くん、どうしてあんな……」「もうやめましょうって。起こったことはどうしようもできないんですから」 特にショックを受けていたのは俺と同じ、先代座長時代から残留していた“…

変わらぬ愛を求めて

嫌いという感情は、きっと自分自身を守るためにあるのだ。 多くのものを好きでいるには、人間の心はあまりに小さい。 薄暗がりのカーテンコール。拍手喝采は、起こらない。 当然だ。舞台上には私しかいないのだから。「『志島の娘』もこの程度か」 観客席か…

星が見えぬ日に

彼女の墓前に向かうのは、命日でも誕生日でもなく、自分が出演した公演の千秋楽だと決めていた。 適当に買ったペットボトルのミネラルウォーターを供え、祈るでもなくただ立ち尽くす。これが彼流の墓参りだった。知人からは礼儀知らずだと窘められるが、別に…

弊団所属俳優斎波正己の暴行未遂事件について

この度は斎波正己の暴行未遂報道により、関係者の皆様及びご来場者様、ファンの皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。斎波による宍上紅蓮に対する暴行未遂、及び恐喝的行為があったのは事実であり、一歩間違えれば未遂…

過去公演紹介

三人劇「貴人、英雄、首切り男」 原作・脚本 志島青児 演出 乾拾 出演 斎波正己 城戸礼衛 浮島和見 story 数年前に革命が起き、王制から共和制となった某国。 処刑人を務める「首切り男」は政府の命令に従いながらも、内心処刑制度に疑問を抱いていた。 そん…

次回公演のお知らせ

ミュージカル「五十フランの泥」原作「或る無情への墜落」演出 乾拾脚本 藍条遼基主演 斎波正己(アデル・メフシー) 宍上紅蓮(リュシアン)他出演生越たつみ(パヴォット)薄川美深佳(ジジ)吾風ユウジ(ワルテール)真鉄静(ルチオ)城戸礼衛 葉原地広 …